アクセシビリティの祭典2019 参加レポート

2019年5月16日に神戸で開催された「アクセシビリティの祭典 2019」というセミナーに参加しました。セミナー費用、交通費、懇親会費用、ホテル代はもちろん会社負担です。なんてすばらしい会社制度!

昨年は弊社CEOの森田が参加して、同様にレポート記事を投稿しています。併せてお読みください。

アクセシビリティの祭典2018に参加してきた

わたしは網羅的なレポートは得意ではありません。技術者目線で、うんうんと頷いたり、へーっと参考になった点を中心に書いていきます。

UDトークのセッション

アクセシビリティにまつわるセミナーとだけあって、会場のアクセシビリティには実験的なものも含め色々と配慮がなされていました。なかでも一番力を入れられていたように感じたのが、リアルタイム翻訳・字幕表示システムの「UDトーク」でした。セッションの登壇者のひとりはUDトークの開発者さん。

セミナー中、UDトークは私にとっても非常にありがたいツールになりました。わたしは会話の内容をリアルタイムで解釈していくのが少々苦手です。そのためUDトークを手元(スマホ)に用意しておくと安心感が違いました。ちょっと聞き逃しても手元を見ればプレイバックできるのだと思えるのがよかった。

ほかにも、メモの代替としてもUDトークは活躍してくれました。セミナー中におっと思った箇所で、スクショとって、ちょちょっとハイライトマーカーを引くだけで、メモ完了というお手軽さ。たんじゅんに便利でした。

NVDAのセッション

本セミナーはアクセシビリティ全般を取り扱うセミナーですが、このセッションはウェブの、しかもフロントエンドがっつりのかなり濃い~内容でした。私はエンジニアど真ん中でしたので楽しく拝聴しました。

display: tablea 要素をNVDA+Chromeで読み上げると、「リンク」じゃなくて「クリック可能」と読み上げられるデモが実演されました。これは display プロパティに設定した要素の見え方がアクセシビリティツリーの形成に影響を及ぼしているため。似た問題である list-style: none したリスト要素がリストとして読み上げられなくなる問題のことも思い出しました。この問題、そういや普段あんまり意識できてないなあ、と気づかされました。いかに低コストに問題を検出・解消するかを改めて考えておかんとなー。

Googleの広告に ins 要素が使われていて、スクリーンリーダーユーザーの混乱を呼んでいるという話も興味深かったです。

続いてのYouTubeの検索が完了したことが読み上げでわからん(SPAだから)、という話も改めて身が引き締まる思いでした。SPAの実装は覚悟だし、やっていかんとなあ。

NVDAは開発思想のひとつとして、標準技術に立脚しています。現状、それぞれの支援技術の挙動はわりとバラバラですが、NVDAに対応しておけば将来のスクリーンリーダー対応の準備となる、という登壇者の西本さんのお言葉はとても心強いものがありました。ウェブ標準の波が支援技術にも来ているんですね。

アクセシビリティとAIの話

マイクロソフトが開発している「seeing AI」の紹介がありました。マイクロソフトはアクセシビリティ領域へのAI活用を強く推進していて、本当に心強い。この事実だけで、人類の未来は明るいなあ、と感慨にふけってしまうほどです。

ウェブアクセシビリティ最新動向

WebAIMが世界の上位100万サイトを自動チェックにかけた結果を公開していて、その紹介がありました。結果はアクセシビリティの問題を抱えているページの割合が驚異的に高くて衝撃です。

法整備についてのお話も。東京都は条例で、事業者に対して、障害者差別解消法の「合理的配慮」の義務化をしていたのですね。まったく知らなかった。祭典の後半で木達さんも重ねて強調していましたが、日本は法整備に関して他国に後れを取っています。法令の義務化はとにかく必要なものだと思います。東京都の場合は、オリンピックの開催が後押しになったのだろうと思いますが、そういうの無しでも、もっと進んでいくといいですね。

最近アップデートされたWCAGの変更点についても触れられていました。われわれは対応側の当事者なので、ここらへんはきちんと追いかけてまいりましょう。

スペシャルトーク

全部で6つのグループが10分間ずつのLTをされました。この辺りちょっと疲れてきてて注意散漫・メモも絶え絶えだったのですが。。

クラスメソッド持田さんのAlexaアクセシビリティの紹介は知らないことだらけだったので興味深かったです。Alexaはかなり進んでるんですね。やはり世の中に与えるインパクトは、プラットフォーマーの活動が一番でかいわけですから、ありがたいなーって思う限り。(そんな感想で良いのか?)

野田さんの話はすごいの一言でした。プレイングマネージャーの鏡だなあと。スライド量がぶっ飛んでいて全然読み切れなかったので、後日公開されるスライドを熟読しようと思います。

アクセシビリティの未来を考える

木達さんと持田さん、ファシリテーター村岡さんのディスカッションでした。お二方ともさすがの視座の高さで、ふむふむと納得するほかありませんでした。日本の法整備の遅さや、少子高齢化のどうしようもない悲惨さなど暗い話題も取り上げられましたが、それ以上に情報技術やロボット技術の革新による未来の明るさが個人的にはまぶしいです。

明るい未来に向けて、われわれ一人一人がアクセシビリティの必要性を認識すべきとの言葉が木達さんからありました。そうですよね~。うんうん。


ところで弊社ネコメシは、ロゴスポンサーとしてアクセシビリティの祭典に名を連ねていました。ロゴスポンサーはロゴだけがウェブサイトなり、セッションの間のスクリーンなりに出るんですが、ここが誤算でした。会社名の入らないマークだけのロゴを提供したために、スクリーンを一瞥しただけでは何の会社か全くわからない(ググりようがない)状態になってしまっていたのです。非アクセシブル。なんたる不覚…。次回スポンサーになるときは気を付けていきたい所存です。