Professionalismがもたらすアクセシビリティの実現

アクセシビリティ Advent Calendar 2019 – Adventar24日目の記事です。

アクセシビリティを推進する界隈すべてを把握しているわけではありませんが、僕の観測圏内においてだけいっても、その界隈にはいくつかの流派というか心意気の方向性というか、しいていうならスローガンのようなものがあったりします。たとえばますぴーがいうところの「でもやるんだよ勢」であったり、Rikiya Iharaがいうところの「一発当て太郎」などが代表的かなと思います。

ちなみに「でもやるんだよ」は、RHYMESTERというヒップホップグループの「Walk On -Hey,DJ JIN Pt.2-」という曲の「この道はそう甘くないぜ、でもやるんだよ!志は高いぜ」という歌詞が元ネタで、アクセシビリティの実現に際してどんな障壁があってもやってやるという志を示しており、ますぴー曰く「自分を鼓舞するために掲げている」とのことです。一発当て太郎はよくわかりませんが、まあアクセシビリティで一発当ててやろうということなのでしょう。

いずれにしても、このように何らかのスローガンを掲げて推進活動を実施することで、傍目にはその活動から指針なり方針なりを見出すことが容易となり、賛同や支持を表明しやすくなるという利点があります。また、アクセシビリティの実現に対して消極的、あるいは疑義を払拭できない状況にあるような組織や環境においては、アクセシビリティの推進は、ともすれば孤独な闘いのようになってしまうこともありますので、こうしたスローガンのもとに気持ちを集結するというのは心強さがあり、単なる情報交換ネットワークの域をこえた意味をもっていることは間違いありません。

さて僕はといえば、こうした掲げるスローガンは特にないのですが、アクセシビリティの実現に対して、常に実現させるという側にポジションをとっています。どんな障壁があろうと、立ちはだかる何かがあろうと、なんなら予算がつかなくても、webデザイン業という生業をして生きていくにあたり、自分的にアクセシビリティの実現として最低限のやるべきことは絶対にやるというポジションどりです。わかりやすいところでいえば、HTMLのソースレベルでいったら、むしろ非アクセシブルなソースを書くことができない体になってしまっているというようなことです。この姿勢は、戦略、企画、設計といった、実装よりも前の時点から完全にそうであり、この状態を、しいて言葉で説明するならば、それは「Professionalism」であるとしか言いようがなく、そうであるがゆえに、目をつぶっていてもアクセシブルな提案になるし息をするようにアクセシブルなほうを採択しているという感じです。

Accessibility – W3Cから引用しますが、Tim Berners-LeeがかつてWebについてこのように言いました。

The power of the Web is in its universality.
Access by everyone regardless of disability is an essential aspect.

Webは障害の有無に関わらず、誰でも使えるという本質をもっているのです。
そうしたWebというものを、飯のタネにしているからには、当たり前の大前提として、アクセシビリティの実現に寄与していなければならないというふうに考えています。すなわち「Professionalism」です。

あとついでにいえば「明日は我が身」というのもあります。このあと帰宅する道すがらダンプが突っ込んできて動けない体になってしまうかもしれないし、今これを書いている最中に建物が倒壊して動けない体になってしまうかもしれない。そうでなくてももっと齢を重ねていけば遅かれ早かれいろいろと体に不具合は出てくるわけです。いざ、昨日までと違って今日から何かができないぞと、そういう事態が発生したときに、それまでに自分がどこまでアクセシビリティの社会的な実現にコミットできていたかによって、それでも今日からもやはり僕はWebを使って仕事をすることができました、Webを楽しむことができましたという、その度合いが変わってくるだろうと思っているわけです。できるだけ、後悔したくないんですよ。やれるうちにやれることをできる限りやっておこうって話です。

まあついでとはいえ、この考え方も、僕の「Professionalism」を形成する要素だろうと思います。

僕のアクセシビリティ推進活動の原動力はそういう感じなんですが、成果物ベースでみていくと実に地味で、細かすぎて誰にも伝わらないアクセシビリティになってしまっているような気もしています。「でもやるんだよ勢」や「一発当て太郎」を見習って、ケーススタディないしケイパビリティプレゼンといったかたちで、社会に向けて具体的な成果を示していけるように励んでいきたいですね。

お読みいただきありがとうございました。

 

これが私の生きる道
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